患者と家族の体験談

Y.M.さん(84)
iNPHと診断され、救われた気持ちに。
「幸せだと思いました」
ご紹介文
2020年7月に前田病院でLPシャント術を受けたY.M.さん(84歳)。地元の病院でiNPHと判明するが、手術するほどではないと診断される。しかし、スムーズに歩けるようになりたいという思いから、前田病院にたどり着く。手術後2年経過したY.M.さんと、ご長男にお話をうかがった。
異変を感じたのはいつ頃でしたか?
「2017年頃です。前に進むのが辛くなり、歩きづらく、転びやすくなりました。いろんなお薬を飲んでもダメだったんです。」
歩きづらさを感じていたY.M.さんと同様、ご長男もおかしいと感じていたという。
「母が『おかしい、おかしい』と訴えるんです。私も、歩き方がおかしいとは感じていました。足が前に出ていないし、小刻みのような歩き方になっていました。」
さらに、Y.M.さんは転倒も繰り返すようになっていたそうだ。
「2018年頃に、母が住んでいるマンション付近で転び、動けなくなったことがありました。管理人の方々に6階の部屋まで連れて帰ってもらったのですが、母は一人暮らしをしているので心配でした。」
病院を受診したきっかけは?
歩行障害が進行していたY.M.さんは、とにかく歩けるようになりたかったと話す。
「足がおかしいので、整形外科にも行きました。でも、私がおかしいと訴えても、先生たちは『そうだねえ…』と言ってお薬をくれるだけ。気分的に良くなった気もしたけど、足は全然良くなりませんでした。」
ようやく地元の病院でiNPHだと判明するものの、手術をするレベルではないと診断される。しかし、Y.M.さんの“治療したい”という強い思いを聞いたご長男は、iNPHに詳しい病院を探したそうだ。
「母が『足の運びを少しでも良くしたい。』と強く希望したので、次男がインターネットで前田病院を見つけ、私が母を連れて前田先生を訪ねました。」
iNPHの診断を受けたときのお気持ちは?
「iNPHを全く知らなかったので驚きましたが、手術できることを聞いて、救われた気持ちがしました。嬉しかったです。」
知らない病気である上、“手術”と聞いて不安はなかったのだろうか。当時の気持ちをY.M.さんに尋ねた。
「不安はなかったです。治療して良くなる可能性があるのであれば、とても幸せなことだと思いました。」
「タップテストで歩行が良くなったことも、決断できた理由のひとつですが、何よりも本人が強く望んでいたので、私たちも手術に踏み切れました。」
ご長男の言葉からY.M.さんの思いが強かったことが分かる。異変を感じてから手術までに数年かかったが、ご本人の強い意思が前田先生へと導いたのだろう。
手術をされてからはいかがですか?
「以前と全然違います。」
Y.M.さんとご長男は声を揃えて答える。Y.M.さんは朝から元気に散歩をしているそうだ。
「歩けるようになったので、近くの公園を朝から散歩して、家に帰ってきたらラジオ体操をするんです。雨の日も歩行練習でベランダを歩いています。」
ご長男は現在も週に1回はY.M.さんの自宅を訪れるが、安心感が違うという。
「母は手術する前は杖を使っていたんですが、杖を使わなくなるまでに回復しましたし、歩行状態が良くなったので、転倒する心配が少なくなりました。手術前は会っていない日は大丈夫かなと心配でしたが、今は安心して過ごせるようになりました。」
「杖がいらなくなったのが嬉しいです。杖は邪魔でねえ~(笑)。」
歩けるようになりたいと強く願った結果、自分の力で歩ける生活を取り戻したY.M.さんから、笑みがこぼれた。

医療法人社団 山本・前田記念会
前田病院 脳神経外科
前田 達浩先生より
Y.M.さんはパーキンソン病も併存されていたのですが、アヒル歩行になってきたことから、パーキンソン病だけが原因ではないのではないかとご長男が気づき、受診されました。手術から2年経過した今でも、バランスよく歩いていらっしゃいます。私から見ると、手術前と比べると非常に良くなったのですが、ご自身は満足されていないようで、「もう少しシャキッと歩きたい。」とおっしゃいます。しかし、意欲・やる気の低下もiNPHの症状であるため、認知症状も良くなっているという証拠。そのため、もっと歩きたいと意欲を見せてくれるのは、大変嬉しいことだなと感じます。